粉にして再利用,『富本銭』鋳型は『酒船石』の石垣
鉱物組成同じ,奈文研調査
 
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 奈良県明日香村の明日香池遺跡で出土したわが国最古の鋳造貨幣「富本銭」の鋳型が
女帝の斉明天皇(在位六五五−六六一年)が築いたとされる酒船石遺跡(明日香村)の
石垣の石材を再利用して作られていたことが四日,奈良国立文化財研究所飛鳥藤原宮跡
発掘調査部の調査で分かった。時の朝廷が石垣に使われた砂岩(さがん)の粒の細かさ
に目をつけ,日本で最初に鋳造する富本銭の鋳型に特別に使ったとみられる。
 富本銭は斉明天皇の子である天武天皇(在位六七二−六八六年)が鋳造させたとの説
が強く,「工事好き」といわれた斉明天皇の事業を基盤にして,天武天皇が国家体制を
整備するために,国産貨幣の鋳造に踏み切った可能性もあり,なぞに包まれた富本銭の
鋳造の経緯を解き明かす上で,重要な発見といえそうだ。
 富本銭の鋳造は,飛鳥池遺跡の発掘調査で,富本銭の失敗品などと一緒に,炉跡近く
に捨てられた状態で出土。「富」や「本」など銭文のあるものも含めて,これまでに約
三千三百点の破片が見つかった。奈良国立文化財研究所が,鋳型片を顕微鏡でくわしく
調査したところ,鋳型の土に含まれている鉱物の種類が,飛鳥池遺跡の南に隣接する酒
船石遺跡の石垣に使われていた砂岩(凝灰岩質細粒砂岩)の鉱物組成と同じであること
が分かった。
 亀形石造物などが出土した酒船石遺跡では平成四年,亀形石造物の南側の丘陵で,奈
良県天理市付近から産出する砂岩の切り石を積み上げた石垣遺構が見つかり,この丘陵
全体を石垣が取り囲んでいたことが分かっている。丘陵は斉明天皇が造らせたと日本書
記に記されている「石の山丘」とみられ,地震で崩れ落ちた砂岩の切り石などが周辺で
見つかっているほか,飛鳥池遺跡でも石敷きの石材として使われていた。
 同調査部は崩れ落ちた切り石を,飛鳥池遺跡にあった工房で砕いて粉状にし,粘土を
溶かした水で練り合わせて,土製の富本銭の鋳型を作ったとみている。
 飛鳥池遺跡で出土する仏像など他の鋳造品の鋳型や,富本銭に続く和同開珎の鋳型
は,砂岩を利用したものでないことなどから,同調査部の松村恵司・考古第二調査室長
は「富本銭を鋳造するためだけに,特別に砂岩を使って鋳型を作ったのだろう」として
いる。平成13年(西暦2001年)1月5日(金)産経新聞
 
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