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超製造業宣言,松下電器の新世紀戦略
第2部「改革」部品事業の拡大
甘え捨て「専業」に挑む
 
 今年(平成十三年)一月二十二日,東京都内のホテルに松下電子部品社長の北代耿士と,松下電池
工業社長の安田幸伸が顔をそろえた。この日開かれる投資家に対する説明会(IR)に出席するため
に上京したのだ。企業のIRは,ふつう企業単独で行う。それだけに,松下電器の子会社とはいえ,
二人がそろってIRを行う姿は関係者に「異例」に映った。
 この二社同時のIRには,実は理由がある。親会社の松下の中期経営計画に沿って,両社とも「破
壊と創造」という共通テーマで計画を策定。それだけに,同時に経営戦略の優劣を問いたいという投
資家が多数いたからだ。
 集まった投資家たちは二人の力量を見定めようと注目。その中で,北代が「近い将来,世界シェア
(市場占有率)一〇%が目標」と力を込め,一方,安田も「国内シェア三〇%を獲得する」と呼応。
目標数値なども明確に打出した。
 これまでは比較的目立たなかった松下電子部品,松下電池工業といった部品会社が,経営戦略を訴
えるようになったのは理由がある。パソコンや携帯電話,ビデオなどのAV(音響・映像)機器のデ
ジタル化によって「部品」の重要性が増し,情報開示の要望が強くなってきたからだ。
 確かに,デジタル機器を使って文字や音声,映像情報などをやり取りする「ネットワーク機能」を
実現したのは,半導体や電子部品の力が大きい。また,「二次電池」と呼ばれる充電式電池の性能が,
携帯電話の軽さや使用時間の長さを左右している。
 「基幹部品事業で年率七%成長を達成する」
 松下電器社長の中村邦夫が強調するのは,最近になって,家電製品よりも,基幹部品を売るほうが
収益性が高いという”逆転現象”が続いているからだ。それだけに,北代や安田の投資家に対する言
動は,松下電器の株価にも大きく跳ね返ってくる。
 製造業の海外移転が続く現在でも,電子部品メーカーは日本に集積している。「携帯電話の中身を
みると,部品はほとんど日本製」。中村が言う通り,国内メーカーの技術水準は高く競争も激しい。
 シャープや三洋電機といった関西の電機メーカーも最近は,部品事業に経営資源を集中。村田製作
所やロームといった部品事業メーカーの収益率は,産業界全体でも際立っている。
 その中で,松下電子部品は村田製作所など専業メーカーの後塵(こうじん)を拝し続けてきた。「松
下グループの一員であるということで,それなりの業績を残せた。思い切った経営判断を怠ってきた」
と北代は悔やむ。
 現在,北代の頭にあるのは,どう「甘え」を排除して,収益力を高められるかだ。すでに,社内の
組織も思い切って再編するなどの経営改革も断行した。
 一方,安田も,競争が激しくなっている二次電池事業の強化に,全力を傾けている。ライバルは,
東芝からニッケル水素電池事業の譲渡を受け,二次電池事業の拡大を図る三洋電機。
 安田は,「ニッケル水素よりも将来性が高い」と主張するリチウムイオン電池の生産設備を約百億
円で増設する計画を決断した。
 「布石は打った。これから問われるのは,収益力という答えだ」。北代も安田も思いは共通してい
る。
 松下の子会社は,グループ内の需要を確保できるという強みを持っている。その強みを維持しなが
ら「グループ外の市場拡大に力を入れる」というのが北代と安田の思惑だ。
 だが,村田製作所社長の村田泰隆は,これに疑問を投げかける。
 「顧客は,部品不足になったらグループ取引を優先するかもしれないという心配もあるはず。しか
も,発注部品を通じて,完成品の情報が松下側に漏れるかもしれないという懸念もある」。北代や安
田が言うほど容易ではないという思いが,専業としてシェアを積み上げてきた自信が村田にはある。
 しかも,最近では,米国の需要減などから,電子部品の成長神話にも陰りが出てきた。アジアの部
品メーカーによる低価格攻勢も重なり,競争はさらに激しくなってくる。
 「基幹部品事業で年率七%成長」「連結売上高の三割を部品事業で稼ぐ」。中村が描く目標の実現
は,北代や安田など子会社トップの決断力にかかっている。<文中敬称略させていただきました>
(記者:小島清利)
 
平成13年(西暦2001年)2月24日(土)産経新聞
 
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