草木の精,牧野富太郎博士
 
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 「私は植物の愛人としてこの世に生まれて来た様に感じます。或(あるい)は草木の精かも知れん
と自分で自分を疑います」。牧野富太郎博士(1862〜1957年)はこう言っていた▲生まれたのは高
知県中央部の佐川町。幼いころに両親を亡くし,ひとり裏山で草木と遊んだ。小学校に入ったが,授
業がつまらないのでさっさと退学し,後はもっぱら独学で植物を学んだ。「師匠というものが無かっ
たから私は日夕天然の教場で学んだのです」▲自然を師と仰いだ牧野博士は日本に自生するほとんど
の植物を調査してまわり,多数の新種を発見した。命名した植物は2500種に及んだ。草木の精の足
跡をたどる「牧野富太郎と植物画展」がいま東京D開かれている。(平成13年4月8日まで小田急美
術館,6月9日から大阪市立自然史博物館)▲代表作「大日本植物志」第1巻第1集(1900年)の巻
頭を飾るのはヤマザクラである。48.3×33.6センチメートルの大型図録いっぱいに描かれた力強い
ヤマザクラ。おしべ,めしべ一本一本,葉の葉脈一筋一筋,枝の皮目まではっきりわかる。驚くべき
超精密作業だ▲展覧会には博士の植物画が多数展示されている。「花は黙っています。それだのに花
はなぜあんなに綺麗なのでしょう? なぜあんなに快く匂っているのでしょう? あなた方は何の気
なしに見過ごしていらっしゃるでしょうが,植物たちは歩くことこそ出来ませんが皆生きているので
す」。博士が描いているのは生きた植物の肖像画だ▲博士の少年時代,故郷はヤマザクラばかりだっ
た。そこで博士はソメイヨシノの苗木を送り,ヤマザクラにまぜて植えた]という。博士のソメイヨ
シノはその後どうなったのだろう。佐川町役場に電話したら,「いま,町のソメイヨシノは満開です。
土日(平成13年31日・1日)が見ごろでしょう」と言っていた。
 
平成13年(西暦2001年)3月31日(土)毎日新聞
 
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