少年事件 自殺願望や強い劣等感
最高裁分析 家出など前兆行動も
 
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 少年事件の動機や背景の解明を進めてきた最高裁の研究会は四日,事件を起こす少年には,深い挫
折感か追いつめられた心理で自殺願望や強い劣等感を抱いているなどの特徴がみられるとする調査結
果を初めて公表した。家出や自傷行為などの事件の前兆行動があるとも指摘している。
 調査は家裁調査官研修所が進め,調査官,裁判官,少年院の担当者,精神科医,教師ら十六人が参
加。平成九−十一年に起きた殺人などの単独事件十例,集団による事件五例を分析した。
 その結果,単独の十人について,@幼少期からの問題行動が親の体罰や叱責(しっせき)でエスカ
レートA表面上は問題を感じさせなかったが,温かい人間関係をつくれなかったB思春期に大きな挫
折感を体験−の三タイプに分類。
 さらに共通の特徴として「自殺願望など追いつめられた心理がある」「他人への共通性が乏しく,
未熟な感情しか自覚できない」「強い劣等感を抱いている」と指摘した。十人のうち七人が事件前に
自殺未遂をしたり,自殺を考えていたという。
 
重大少年事件 動機や背景は・・・・ 最高裁指摘 夫婦のきずなの弱さ
しつけと虐待はき違え 決して「ひとごと」でない
 
 最高裁が四日公表した重大少年事件の調査結果は,事件を起こした少年の家族関係にも触れている。
@幼少期から問題行動A表面上は問題がないB思春期に大きな挫折感を体験−と分けた少年のタイプ
を踏まえ,家庭の特徴を分析。「どこの家庭にも見られるものだが,これらが継続して重なって存在
している」としており,少年事件が決して「ひとごと」ではないことを示唆している。
 問題行動
 育児の不安や借金,夫婦の不和など親自身が問題を抱えている家庭では余裕をもって子供に接する
機会が少なく,しつけの名のもとに親からひどい体罰を受け続けた少年も少なくない。
 その結果,少年自身が「自分はだめな人間」「愛される価値のない人間」というイメージを持つよ
うになり,対人関係のなかで適切な距離が取れなくなったことが犯行の背景として指摘されている。
 
 表面上問題なし
 親の少年への期待が強く,三歳ぐらいでも電車で座席を譲るなど,少年の方が親の期待を先回りし
て行動,子供らしい感情を抑える特徴がある。
 思春期になると,内的世界に閉じこもり,凶器を集めたり,攻撃的・暴力的なゲームやビデオにの
めり込んだりする傾向がある。このタイプは両親も同様に表面的には社会に適応しているが,嫁姑(し
ゅうとめ)問題など深刻な葛藤(かっとう)が潜在的にある。
 夫婦のきずなが弱いが,表面的な夫婦関係は維持されているため,少年が事件を起こすまで自分た
ちの問題に気づかないこともある。
 思春期の挫折
 両親が地域の活動に積極的に参加するなど参加するなど表面的には大きな問題はないが,少年のよ
い面だけを見て,他の面を全く見ようとしないケースがある。
 少年を過大評価しているため,挫折して期待にこたえられなくなると,手のひらを返したように少
年を無視したり一方的に怒りをぶつけたりする。怒りや嫉妬(しっと)などの感情を持つ自分を親が
丸ごと受け入れてくれないことで犯罪至るケースが出てくる。
 今回の調査について最高裁は,六月をめどに結果をまとめた小冊子を市販する予定。
 
識者に聞く
思春期の精神医学に詳しい「名越クリニック」の名越康文医師の話:「調査結果で異常人間という見
方が否定され,どの少年にも起こり得ることがわかった点で一定の意味はある。結果の中にある『自
殺願望』も極端に見えるが,『生まれてこなければよかった』『人生をリセットしたい』と多くの子
どもがある時期に思っている。社会環境を根本から見直すことが重要な解決策だといえる」
 日弁連子どの権利委員会委員長の斉藤義房弁護士:「非常に有意義な試み。国民が”モンスター”
のようにとらえ,不安がっている加害少年の実像を理解してもらうことが重要で,その手助けになる
だろう。犯罪の背景は深く,いろいろな視点から見ないとだめ。どこに相談したらいいか分からない
か親をサポートできるよう関係機関の連携強化が望まれている」
 
平成13年(西暦2001年)4月5日(木)産経新聞
 
 
 
親が育てる!? 子どもの「闇」
悪い面 見ない傾向
 
 子どもを「加害者」にさせないために,父と母はどうすればいいのか。少年の凶悪事件を調べた最
高裁の家裁調査官研修所は,対象となった15事件に関与した少年らの親にも焦点をあて,原因を探
っている。いずれも子どもの立場でかんがえることができず,前触れの行動を見逃して事件に至って
いる。子どもをかわいがりすぎたり,我が子をしかるのを恐れたり,少子化が影響している傾向も指
摘された。
 
 ★過大評価
 子を大切に育てるあまりに,親が悪い面を見ない傾向がみられた。名門高校に進学したある少年は
父と同じスポーツ好きで,クラブ活動で活躍したが,内心は父母の期待を重荷に感じていた。少年は
喫煙を見つかったのをきっかけに不登校になり,父の叱責(しっせき)から逃れるため家出を繰り返
すようになった。
 この例では,親が子どもの素質に目を奪われ,少年はありのままの自分を出せず,「よい子」を演
じ続けた。親が自分に都合のよい面しか見ないと,子どもは親に素顔を出せなくなり,心の中に闇を
育ててしまうという。
 
★しかれない親
 教師や専門家を交えた討議では,「しかる親としかれない親の2タイプある」ことが話題になった。
しからない親は子に泣かれることを恐れ,いつも子どもがニコニコしていないと不安になる。
 親自身が不安に満ちているため,子どもは真に「守られている」と思えず,外で問題行動をとった
り不安を抑圧してしまいがちになるという。
 
★コミュニケーション不足
 両親共にそろい,生活面で問題のない家でも,非行は起きる。
 ある家庭は嫁しゅうとめの関係がよくなく,表立ったトラブルはなかったものの,父親は飲み歩い
て不在がちだった。少年は内面の葛藤(かっとう)から時々ほおがひきつるチック症状を起こした。
自分をかわいがってくれた祖母が亡くなった時,父母との距離が遠いことが気づいて不安に襲われ,
ナイフやモデルガンの収集に興味を持つようになった。
 夫婦げんかなどを恐れるあまり,お互いに向き合うことをやめ,コミュニケーションが乏しかった
ことが少年の心に影響を及ぼしたとみられる。
 
★父 親
 非行少年の父親は,主体性がなく影の薄い父と,暴力的で威圧的な父に大別された。前者は父親が
忙しく子育てを母親に任せきりにした末,子どもの問題に目配りできなくなる。後者は父がスポーツ
や勉強に教育熱心な余り,しつけが虐待に近くなる例もあった。
 思春期の子どもは親に反抗しつつ親から離れる寂しさを感じ,親との新しい関係を求めているとい
う。特に男子にとって,父親は暴発を防ぐ大切な役割がある。討議では「父親らしさを誇示したりせ
ず,自分の弱さを率直に話し,家族全体を包み込むような愛情を自然に伝えること」が,大切だと話
し合われた。
 
平成13年(西暦2001年)4月5日(木)毎日新聞
 
 
 
余録 甲子園のグランドに新世紀の新風が吹き込んだ。目にみえにくい「頑張り」や「困難の克服」
が,新たな物差しに加えられ,選ばれた球児たちも「夢」がかなった慶びをハツラツとしたプレーで
表現した▲センバツ優勝戦は春夏を通じて,共に初優勝を目指す常総学院と仙台育英の東日本勢同士
の戦いとなった。3度目の挑戦で常総学院が悲願の甲子園初優勝をつかんだ。勝機は一瞬にして訪れ,
一瞬にして去る。三回のチャンスに3点を入れた常総学院が終始,試合を有利に展開した。仙台育英
は七回,逆転の好機を逸して大勢が決まった▲「かなわない相手でない」「5分と五分」。百戦練磨
のベテラン,木内幸男監督は試合前に選手に暗示をかけてやる気を出させた。試合でも,常総ナイン
はバントあり強攻策ありの「木内マジック」に乗せられた。選手の特性や試合状況をつかんだうえで
のさい配の妙だった▲常総学院の地元,土浦市にある霞ケ浦は古くから「流海」(ながれうみ)「浪
逆海」(なみさかうみ)とも呼ばれた。海水の流れを読むことが,サヨリやボラの漁獲を左右してき
た。人々は生活の中で流れを読むことに集中した。好機を逃さない常総学院の野球はこうした風土に
無縁ではないのかもしれない▲今大会は初出場が10校にのぼり清新な顔ぶれがそろった。中でも「21
世紀枠」で選ばれた宜野座の選手たちは,準決勝で惜しくも力尽きたが,見事な試合ぶりだった。約
5000人の村民に支えられ,大舞台にひるむことなく戦い抜いてきた。高校野球が地域の人たちと共
にあることを見せてくれた▲紫紺の大旗は「白河の関」をもう一歩で越えられなかった。藤原定家は
この季節を「春がすみ霞の浦のゆく舟のよそにも見えぬ人をこひつつ」と詠んだ。5分咲きの霞ケ浦
のサクラが大旗の着くのを待っている。
 
平成13年(西暦2001年)4月5日(木)毎日新聞
 
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