科学も認めた音楽療法 アルツハイマーに効果
性ホルモンの分泌促進
奈教大の福井助教授データで実証、世界初か
 
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 奈良市が独自のカリキュラムで制度化し実施している「音楽療法」が、老人性痴ほう症の一種、
アルツハイマー病の予防、治療に効果があるという性ホルモンによる内分泌学的研究の科学デー
タが、十八日から横浜市のパシフィコ横浜で開幕する「第一回日本音楽療法学会学術大会」(日
本音楽療法学会主催)で発表される。音楽療法の前後で唾(だ)液中に含まれる二つの性ホルモ
ン「テストステロン」「エストラジオール」が二〜四倍にも上昇することが認められた。科学的
データが実証されたのは海外でも例がないという。
 奈良教育大学の福井一・助教授(音楽生理学専攻)が、奈良市音楽療法推進室の臨床学的取り
組みに基づき、音楽療法を施す前後約一時間の時間帯を決めて、唾液一ミリリットル中のホルモ
ンの分泌量を調べた。
 性ホルモン「テストステロン」と「エストラジオール」はそれぞれ男性ホルモン、女性ホルモ
ンといわれるもので、性を決定づけるほか、体の細胞や組織、体型などに影響力を及ぼすとされ
る中核ホルモン。アルツハイマーのお年寄りにはこの二つのホルモンの減少が認められ、適量に
満たないと体の免疫を含めた機能回復が遅れたり、俗に「もの忘れ」と言われる知覚認識などの
著しい低下が認められる。
 このため症状回復にはホルモンの補完治療などが施されているが、確立された治療法ではなく、
薬物治療は副作用や効果に個人差があるなど疑問も出ている。
 今回の被験者は市内の特別養護老人ホーム「万葉苑」に入所中の女性五人と弾性一人。年齢六
十七歳から九十歳でアルツハイマーの症状は重度。実験は昨年五〜七月まで月一回実施し、決ま
った音楽療法士がセラピストと助手を務めた。音楽療法の効果を明確にするため、音楽を聴くだ
けの「音楽聴取」▽セラピストが音楽の話をする▽音楽療法の三段階で実施した。
 結果、被験者の性ホルモン検出の平均値は「エストラジオール」が刺激前の百二十ピコグラム
が「音楽聴取」などでは大きな変化がなかったのに対し、「音楽療法」で四百ピコグラム以上に
増加。「テストステロン」も「音楽療法」に限って実施前の四百ピコグラムが九百ピコグラムと
二倍になった。
 研究結果を十九日に学会で発表する荒井敦子・市音楽療法推進室長は「初めて科学的に音楽療
法の効果が実証でき、療法士の国家資格化が秒読みとなる中で、意義は大きい」と評価。
 また、福井助教授は「音楽聴取などと段階的に分けて音楽療法の効果を示したデータとしては
おそらく世界で初めて。効果の持続が今後の研究課題となるだろうが、一般のお年寄りに予防の
面で音楽療法を広げるきっかけになる」としている。
 奈良市では平成六年に音楽療法検討委員会、翌年同審議委員会を設置し、独自のカリキュラム
で音楽療法士を養成。九年度から音楽療法を市内六十カ所の福祉施設で実施している。
 福井助教授は京都市芸術大学音楽科卒。ミシガン大学大学院修士課程を修了し昭和六十一年か
ら現職。「音楽の行動内分泌的研究とテストロステン」など論文発表多数。
 
独自のカリキュラムで進められている奈良市の音楽療法
 
平成14年(西暦2002年)1月17日(木)奈良新聞掲載
 
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